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2017.10.11 Wednesday 22:39相変わらず腫瘍マーカーは上昇していて、癌の肝転移も大きくなっているらしく、不安は尽きない毎日です、が。
殺人的な酷暑も過ぎ去ったことだし、ぼちぼちブログの更新を再開します。
前々回のエントリに、「上っ面だけの言葉が嫌いだ」と書いたら、読者さんからのコメントで、その真逆の言葉があるよ、と教えていただきました。
昨年101歳で他界された、むのたけじ氏の「体重をかけた言葉」です。
むのたけじ氏は、戦時中、朝日新聞の従軍記者でしたが、敗戦後すぐ「負け戦を勝ち戦のように報じて国民を裏切ったけじめをつける」と新聞社を退社。秋田県で自ら「たいまつ」という新聞を発行し、「戦争絶滅」を訴え続けた人です。
むのたけじ氏の著書は未読だったので、さっそく『詞集 たいまつ』の1巻を手に取ってみました。
箴言のような短い文章が集められた本。まえがきにあった著者のポリシーは、「コトバに全体重をかける態度こそが大切」というもので。読む側としても襟を正して、一文ずつ、ゆっくり読むことにしました。
『詞集 たいまつ』1巻の中から、印象に残った言葉を幾つか、以下に引用してみます。
ふだんのくらしの言葉でいいあらわせば、一番わかりやすくて一番短い。それが一番簡単そうで一番むずかしい。
* * *
読書は第四の食事である。望ましい作法は、他の食事と同じである。暴飲暴食は精神に下痢をおこすだけである。一度に多量ではなく毎日欠かさず適量を摂取すると一番ためになる。
* * *
腐ったおとなに寛大である社会は、清純な子どもに対して必ず残酷である。
* * *
革命とは新しい尺度の創造運動である。それを在来の尺度で推測するから、わからなくなったり、おびえたりする。古い尺度は、それをどんなに神聖化しても新しい目盛りには合わない。
* * *
やたらに防腐剤を用いるな。古いものが腐りきらなければ、新しい芽は出てこない。腐るべきものが十分に腐らないと、毒がひろがる。古いものでも十分に腐ると、こやしになる。
* * *
洋服なら既製品でもぴったり合うことがあるが、思想と現実とのかかわり合いでは既製の寸法がぴったり合うことはない。現実は生きており、思想は原則であり、従って思想は生かして使わなければならぬ。どのような現実であれ、それは変化するもの・変化させ得るものとして受けとめるところに、思想の第一歩がある。
(むのたけじ『詞集 たいまつ I』より)
初版は1976年ですが、今も古びていない、歯ごたえのある、噛みごたえのある言葉です。
ある言葉が、誰かにとっての「たいまつ」になるとしたら、それは言葉を「書くこと」や「語ること」によって、ではない。
それを「生きること」によってのみ、言葉は「たいまつ」となり得るのだ。
——そんなメッセージが、足元から響いてくるような本でした。
上に引用した読書論のくだりは、速読・多読が要請される今の時代の趨勢には合わないかも。
でも振り返ってみると、自分にとって真に「血となり肉となった」本とは、一行ずつ、時間をかけて、ゆっくり読み進めたものだったように思います。
私は、今の時代のトレンドとは関係なく、時間がかかっても、自分の「読書」をしていきたい、と改めて胸に刻みました。
人生の残り時間を考えたら、なおさら。
これまでもそうしてきたように、これからも、流行り物は横目で流しつつ、読みたい本・読むべき本を手にしていきたいです。
以下次号。
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