2010.10.22 Friday 23:45
就活―――自分にとって、目眩がするほど苦手なものでした。
私自身は、以前にも書いた通り就職に破れた敗残兵で、たぶんもはや一般の人と同じ土俵で競うことはできない、真性ダメ人間の落ちこぼれなので、以下に書くことは負け犬の遠吠えにしかならないかもしれません。

でも、やっぱり今の就職活動って変だと思うし、企業文化に適応できない人がいるのも、当然だという気がするのです。
今のシステムを不条理だと感じた人は、黙って通り過ぎずに、その疑問を持ち続けてほしい、という願いをこめて、いくつかの記事をご紹介。

■日本の人事システムについて(内田樹の研究室)

就活で苦しんだ経験のある人、これから就活する人には、とりわけ読む価値があると思う。
ここに引用されている茂木健一郎さんの意見もその通りだと思うけど、「優秀な人材」とはいえない普通の人間にとって、内田樹さんの言葉にはすごい説得力がある。私が読んでちょっと泣けた部分を、以下に引用。(内田樹さんは女子大の先生なので、主語が「彼女」になってますが、もちろん男性も同じ状況だと思います。)
それ以上に深刻なのは、わずか20歳で「自分は査定される側にあり、この査定を通過しなければ、社会人として認知されない」という「不安」が彼女たちの感情の通奏低音になってしまっていることである。
受験勉強ももちろん「査定」であるけれど、ここまでの「不安」を伴うことはなかった。
というのは、受験の場合「どうして落ちたのか」の理由がはっきりしているからである。
点数が足りなかったのである。
受験勉強すれば必ず点数は上がる。1時間勉強すれば、間違いなく1時間分上がる。

その意味では、受験というのは努力と報酬の相関がかなりの確度で予見される「合理的な」プロセスである。
けれども就活はそうではない。
面接で落とされた場合、本人には「どうして落ちたのか」がわからない。採用する側は「どうして落ちたか」の理由を開示する責務を免ぜられているからである。
その結果、学生たちは、自分には自覚されていないけれど、ある種の社会的能力が致命的に欠如していて、それがこういう機会に露出しているのではないか・・・という不安を抱くようになる。
その不安が就活する学生たちをしだいに深く蝕んでゆく。
就活というものが、「自分にどのような社会的能力が欠如しているのか開示されないままに、その能力を査定されるゲーム」というのは、言い得て妙だと思う。ゲームをうまく楽しめた人は勝つのだろう。
でも、最後までゲームのルールが何なのかわからなかったトロい人間にとっては、本当に地獄だった。
内田樹さんの「ふつうの人たちが等身大の自尊感情を持って暮らせる社会を確保することの方が先決ではないかと思う」という言葉には、心から同意したい。


■なぜ、「働く」とこと「内面」がここまで結び付けられるのか?(腐フェミニスト記)

私が就職活動していた頃は、エントリーシートというものは存在しなかったけど、この違和感はよくわかる。私には、自分の中のどこを探しても「企業の求める人間像」なんて見つからなかった。
多くの就職を求める学生や中途採用者は自己像をゆがめてまで、
職を得ようとしているんである。
評価される集団の価値観をあらかじめ習得し、
過度に適応していなければ、「評価対象」としてすら扱われない。
そのことの苦しみの意味がわかっているんなら、そのことをしっかり語ってくれ。
私はどうしても「企業の価値観」というものに馴染めなかったので、この文章はすごく納得できるものだった。
この記事、はてなブックマークコメントもたくさんついていて、こちらも参考になります。


■ベーシック・インカム 朝までニコニコ生激論 2/3(ニコニコ動画)

これ、本当はベーシック・インカムについての議論なんだけど……ここでは本題とはちょっと離れて、法学者・白田秀彰氏の発言を引用します。動画の4:30あたりからを一部書き起こしました。
●学生たちが就職活動しているのを見て、単純に変だと思うんですよ。雇ってもらうのにあれだけコストをかけてるのって何よ?
あれだけコストをかけないと雇ってもらえないという状況を考えると、要するに「働かなくてもいい」という状況が発生していると見るのが正しいと思う。
●「雇ってもらえなきゃ生きていけない」と思い込んでいる状態は、精神的な奴隷状態。
●公共事業の問題。憲法が就労の義務をうたっているから、国家は何とかして仕事を割り当てようとしてますが、根本的に仕事ないわけですよね。だから、必要のないものを造ったりして、余っている労働力を吸収するために無理やり仕事をつくっている。そのために自然環境や資源を浪費している。

「ニート=働きたくない怠け者」という論調は、さすがに近頃は少なくなったように思う。
けど、もう一度確認しておく。そもそも雇用がないんだよ。
それは「不況だから」という理由だけではない。
グローバル化・技術革新が進むと、少ない労働力で生産が可能になるから、必然的に労働力が余ることになるのだ。(「30年後には世界中の人々が消費する製品やサービスを生産するのに、全世界の労働人口の数%で足りるようになる」という試算もある。)
そういう構造的な問題を無視して、「働く意欲のない若者」的な精神論を語るのは、やめていただきたいですね。

あと、もう一つ付け加えると。
「雇用がない」という話になると、必ず「起業しろ」という人がでてくるけど、これは現実的ではないと思う。
皆が起業家精神を持つことは、おそらく良いことなんでしょう。
でも、現実に「起業する」というのは、それまで働いてきた人脈・スキル・資金があって初めてできることであって、何の経験もないまま社会に放り出された人間に「起業しろ」というのは、どだい無理な話です。
そして経験を積もうにも、そもそも就職できなくて、土俵にすら上がれなかった人間は、どうやって生きていけばいいのだろう?
負のスパイラル、貧困スパイラルはこうして始まるのであった。


■【餃子の王将・新人研修】お前がナンバーワンだwwwwww(YouTube動画)

これ、有名な動画らしい。
ツッコミはYouTubeコメント欄の皆様に任せます。
昔「社畜」って言葉があったけど(今もあるのか?)、これはもう「奴隷」だよね。
こういう文化に適応できない人がいるのは当然だと思うし、壊れる人間がでてきてもおかしくない。

だからといって、「そんな会社辞めればいい」で済む問題でもない。
この男性は、動画の中で「自分は50社以上受けて、ここが唯一の内定先です」と言っている。他に選択肢がないのだ。

ところで、私が素朴に疑問に思ったのは、外食産業で働くのに、こんな軍隊みたいなノリが必要なんだろうか?ということなんですが。
食堂やレストランを経営するのに、あんなに怒鳴ったり、土下座しなきゃいけないものなの?
ドン引きしましたよ、私は。

最後に、上に挙げた内田樹さんのブログからの引用をもって、この記事の締めとしたい。
「文句があるなら、いつでも辞めろ。おまえの代えなんか、いくらでもいるんだ」という恫喝ほど若者たちを凍りつかせるものはない。
自分の社会的能力について不安を抱く若者たちは、たしかに上司からすれば使いやすい部下であるかも知れない。経営者からすればいくらでも労働条件を切り下げられる「安い労働力」であるかも知れない。
けれども、そうやって一国の若者たちを「査定される不安」のうちに置き続けてきたことで、国の「勢い」そのものが枯死しつつあるという事実に、エスタブリッシュメントの方々はもうすこし自覚的になってもよいのではないか。

   (内田樹の研究室「日本の人事システムについて」より)


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| ●月ノヒカリ● | 社会 | comments(6) | trackbacks(0) |
2020.09.12 Saturday 23:45
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Comment
2010/10/23 9:17 PM posted by: 脚袢
今回の記事、大変興味深く読みました

昨日まで学生生活を謳歌して、今日はリクルートスーツを着て、マニュアルに沿ったハッタリをかます…そして、そういったことを疑いも照らいもなくやってのけられる学生を企業が採用する…
このような双方のコンセンサスに対し、、いつ、いかなるように参加すればいいのか、私にはわかりませんでした

おそらく、「ゴチャゴチャ考えずに、そういうふうにやればいいんだ!」との声があるのは、容易に想像できたので、そのような問いを主張することはありませんでしたが(笑)

あと、就職活動を「シューカツ」と呼べるかどうかで、そうしたコンセンサスに従順であるかどうかを計れるような気がします

私も一時は就職活動の真似事をしましたが、時は1999年、「即戦力」や「自分を売り込め!!」などの文字が踊り、バイタリティ溢れるリクルートスーツの男女が元気一杯の表情で写っている就職活動雑誌にうんざりしていました

中でも、不思議だったのは「情報交換が決め手」なるメソッドの紹介でした
本来競うべき「敵」と情報交換をしなければいけないって、どういうこと?…そうした不自然・不健全なる文化が理解出来ない、という観点からも、私は企業に入るための重要な気質が欠けていたのだと思います
2010/10/26 7:35 PM posted by: 松
初めまして、少女ファイトの記事で迷い込みました。

これから就職活動を始めようと思っていたところにこの記事だったのでコメントを残してみようと思いました。

実は何度も失敗しているのですが…
自分の経験として就職活動をしてみて思ったのは、自分にとって大事な部分を妥協すると人生つまらなくなると思いました。

最後に月ノヒカリさんの記事は面白いです。
個人的にはダメダメな人とは全然思えなくて、
blogタイトルからして希望がありますよね。
なので尊敬してます。


2010/10/26 11:39 PM posted by: 月ノヒカリ
☆脚袢さん

就職活動に引っかかりを感じる人というのは、少数派かもしれませんが、確実に存在すると思います。

就職活動では、それまでの学校生活とはまったく異なるものを求められますよね。
結局自分は、就職活動のルールを理解していなかったんだと思います。

後にいろいろ経験して、多少は「企業の論理」というものも理解できるようになったんですが……自分には心身共についていけませんでした。

>「ゴチャゴチャ考えずに、そういうふうにやればいいんだ!」

実際に「そういうふうに」やってみたけど、うまくいかなかった、という感じです。
たぶん自分は、就職活動以前のところで問題を抱えていたので、そっちを何とかする方が先だったのかもしれません。

>「情報交換が決め手」

私もこのメソッド先輩から聞いたことがあって、会社説明会で会った人と話をするようにはしてたんですけど……ただのおしゃべり以上にはなりませんでした(笑)

私も企業に入るための重要な気質に欠けた人間ですが、なかなかこの社会で、取り立てて才能のない人間にとっては、他に生きる場所がないというのも難しいものです。



☆松さん

はじめまして! 迷宮へようこそ(笑)
少女ファイトは面白いですよね〜。

これから就職活動を始めるということなので、エールを送っておきますね。
フレ〜フレ〜\(*^▽^*)/

あと、もう読んでくださっているかもしれませんが、以下の当ブログ記事を贈ります。
「失敗に光あれ」
http://newmoon555.jugem.jp/?eid=182

失敗から学べることは多いと思います。
自分にとって、妥協できる部分とできない部分を見分けるためにも。

月ノヒカリは本当にダメダメですし、ダメ人間を尊敬するとは、物好きにも程があると思いますがw……よかったらまた遊びにいらしてください♪



お二人とも、コメントありがとうございました〜。
2011/09/11 2:44 PM posted by: 青い鳥
異常な価値観に、自己を無理矢理、押し込める苦痛は、はかりしれませんね…。 やはり日本は、善し悪しは別にして、資本主義社会の枠内で経済が営まれています。企業は利潤を追求する組織であるものですから、企業が人間を評価する「尺度」は、この人間は当社に、いくらの利益を呼び込めるか?の画一的な価値観によって立つのですね…。わたしたち、生身の人間は、「機械」ではなく、感情を持つ生き物なのです…。 得て不得手も千差万別…。絵を描くのがうまい人、歌が上手なひと、ひとを癒す能力に優れているひと…、、、など様々なのですね…。綺麗ごと、理想を持ち続けて、他人を悲しませずに、優しく生きてゆける社会が素敵だと思います。日本の不幸なところは、価値観が「経済的価値のみに収斂されている」ところだと思います。わたしの父親は、戦前生まれですが、いつも言います。「戦前から戦後まもなくは、皆が貧しく、食べる物がなく、苦しかったけど、皆が優しく、なんとなく自然に助け合って、肩寄せ合って生きていた。現代は物は豊かだが、人間の心が殺伐としていて情がなく恐ろしい」…と。
行き過ぎた規制緩和は、人間の尊厳を踏みにじってしまい、弱肉強食に加速がかかります。やはり社会保障などの基盤を整備し、あらゆる人間が「安心して暮らせる社会」にしなければ、優しくて努力が嫌いで、金儲けのできないひとが、生きてゆけなくなりますね…。この世に不必要な人間は、ひとりもいないんですね…。どんなひとも共生できる社会にしたいものです。夢と希望は持ち続けたいですね…。
2014/03/13 8:18 PM posted by: さいてぇ
私もベーシックインカムのニコニコ動画の白田秀彰先生の話を聴きましたが、まさにその通りだと思いました。
2014/03/14 11:49 PM posted by: 月ノヒカリ
さいてぇさん、はじめまして。

私も今読み返して、その通りだよなぁ、と思いましたが……どうも世間的には受け入れられない考え方みたいで、労働環境は相変わらずみたいですね。残念ですが。

コメントありがとうございました。
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