2016.07.11 Monday 20:23
「歴史にifはない」という言葉がある。
同じように、人生にもifはないのが現実だ。
そうであっても、「もしあのとき○○だったら、どうなっていたんだろう?」と未練がましく考えてしまうことはある。

私がよく考えるのは、もし十年前に、今と同じレベルの精神病患者の支援体制があれば、私も「就労ルート」に乗って、それなりに働けていたのかもしれないな、ということだ。

私が最初に統合失調症を発症したのは、今から15年ほど前のことだけど、その頃に比べて今は、精神障碍者の支援体制は格段に整ってきていると思う。
精神科医以外に、PSW(精神科ソーシャルワーカー)にも相談できるようになったのは大きい。
もしかしたら、私が知らなかっただけで、過去にもそれなりに支援体制があったのかもしれない。けれども、そういう情報を知らなければ「無い」のと同じで、だから今、それなりに情報が手に入るようになったこと自体、時代の変化というか、精神病者をめぐる状況は改善されてきていると感じる。

今から十年程前、最初の乳がんの手術後に陥った鬱状態から、ひとまず浮上した頃のこと。
私は支援などまったくない状態で、いろいろと足掻いていたのだった。ハローワークで募集していた就職セミナーに通ってみたり、キャリアコンサルタントの講演を聴きに行ってみたり、簿記の資格を取ったり……そしてそのたびに体調を崩しては落ち込む、というのを繰り返していた。
その時に相談した、精神科医の対応は、今でも忘れられない。
私が動き回った結果、体調を崩したことを伝えると、「そんなの大したことじゃない。疲れるのは普通のこと」といかにも面倒くさそうに言い放つ。「精神障碍者手帳を取得して、就労することはできるのか」と尋ねると、「さあ、知りません。自分で考えて」との答え。その上、「このまま働かずに親の脛をかじって、親が死んだら生活保護を受ける気か。それが嫌ならさっさと働け」という説教まで喰らったのだった。

ちなみにその当時は、「生活保護の水際作戦」が盛んにメディアで報道されていて、私自身、「生活保護は簡単に受給できないもの」というイメージを抱いていた。だからその精神科医の言葉を聞いて、自分はもう、このまま働けないのなら死ぬしかない、と思い詰めることになったのだった。
それから何年もの間、強い自殺願望に苛まれながら、それでもなんとか生き延びたのは、本当に偶然としか言いようがない。

もしあのとき、精神科医が、私も障碍者手帳を取得できることを教えてくれて、障碍者就労支援のような制度に乗れていれば、今の私は、全然違った場所にいたのかもしれない。「普通」とは言えないかもしれないけれども、「普通」の尻尾にしがみつくくらいの生活は送れていたのかもしれない。もちろん、その方が幸せだったかどうかはわからない。

一方で、もし統合失調症を発症したのが30年前だったとしたら、ひょっとしたら一生、精神科病棟で暮らすことになっていたかもしれない。統合失調症は歴史的に、そういう病気だった。

病気と闘うのも、時代や環境の制約を受けるということ。
そしてその結果の幸不幸は、一概には判断できないということ。
たぶんそれが、どうしようもない現実なんだと思う。

先月、癌の転移がわかってからも、いくつかのifを想像してしまった。
それについては、書き出したらキリがないし、意味もなさそうなのでやめておく。

椎間板ヘルニアだと思っていた痛みが、癌の骨転移だとわかった時から、不安や恐怖に支配される時間が長くなった。
今までに経験したことのない頭痛を感じると、「もしや癌の脳転移か?」などと心配になって、いそいそとネットで検索してみる。検索結果に戦慄する。
私の癌は進行がゆっくりなので、まだ数年は生きられるつもりでいた。けど、それだって、確かなことではないんだ。
とりあえず、不安なことは全部メモして、次の診察の時に主治医に尋ねてみることにする。それしか、不安を解消する方法はない。

時々、夜寝る前に、iPodでビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」を聴く。3年前、リンパ節再発がわかったときに、私を励ましてくれた歌。私は再び、マジカルミステリーツアーに誘われているらしい。行き先もわからない旅へ。
でも今は、あの時とは別の歌のように聞こえる。終着駅が、少し先に見え始めているせいだろうか。

あとどのくらいの時間が自分に残されているのかもわからなくて、その残された時間をどう過ごすべきかも定まっていない。私は今も、途方に暮れたままだ。







| ●月ノヒカリ● | 病気 | comments(9) | trackbacks(0) |
2017.12.12 Tuesday 20:23
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Comment
2016/07/13 12:08 AM posted by: てっちゃん
具合はいかがですか?というのは愚問でしょうね。私は今体にそんなに不具合もなく毎日仕事をして当然のように暮らせているのでなんだか申し訳なく思います。
昨年デンマークに行ったのですが、高福祉国家さすがという驚きがたくさんありました。自分ができることを自分のペースでやればいいんだという社会があることに驚きました。
また昔アフリカのザンビアという国で働いていたのですが、そこでは小さい子供や、おじいさん、ご飯を作ってもらっていた20歳のお姉さんが突然死んでいくところでした。死があまりにも日常にありすぎて、まるで舞台劇を見ているようでした。
何を言いたいのかといいますと、月ノヒカリさんをとてもとても応援していますということを伝えたかったのですが・・・・とりとめのない文章ですみません。自分もこの舞台をいつか降りるときがくるのでしょうが、その日が明日でも悔いなく生きたいなーと思うのですが、無為な日々が続いている気もします。おやすみなさい
2016/07/13 6:46 PM posted by: ノラ
書いていたら愚痴みたいになってきてしまいました。お返事は、いただかなくても大丈夫ですし、気が向かれた時でも結構です。

ひどい医者です。というか、そんなの医者じゃないです。医師は人の一生を左右するから師なのに。

今はネットで医者の評判とか、いろいろな制度について検索できるので、便利な世の中になったものです。

生活保護とかは、本当に必要な人たちになかなか行き届いていないです。これも改善していくと良いなと思います。

私は今は特に健康上問題が顕在化していませんが、年齢もありますし、家族も含めてどうなるか分かりません。
健康面以外にも、悩みや懸念があります。
ヒカリさんが頑張っている姿を読み、励みにしています。
2016/07/14 10:10 PM posted by: 月ノヒカリ
☆てっちゃんさん

はじめまして、でしょうか。
励ましの言葉、ありがとうございます。
体調はものすごく悪い、というわけではないのですが、やはり心理的な面、不安が大きいという感じです。

てっちゃんさんはいろんな国に行かれたんですね。そうですよね、生まれる国によっても随分格差はあるでしょうね。
私は、日本人の平均寿命までは生きられないっぽいですが、それでも考えていたより長生きしたと自分では思ってるので、そういう意味では、特に思い残すことはないです。
ただ、これからの闘病生活について考えると、気が重くなりますね……。

無為な日々、いいと思います。無為な毎日が過ごせることが、何よりの幸せかもしれない、とも今は思います。



☆ノラさん

こんばんは。
いやもう私は、特に何を頑張っているわけでもないのですが、こうして気にかけていただけて嬉しいです。

この記事に書いた精神科医については、思い出しても怒りがこみ上げてくるというか、間違いなく自分の人生で出会った医師のワースト3に入ると思います。
医師との出会いが人生を左右する、ということは大いにあるでしょうが、この件については、「悪い方に人生が変わった」例でしたね。
昨今は「心がつらい時は精神科へ」などと気軽に言われますが、自分の経験上、そんな単純な話ではない、と感じます……。
ノラさんは、できるだけ長く、元気に生活されますように。


お二人とも、コメントありがとうございました。それではまた。
2016/07/16 1:14 AM posted by: はなむら
思わぬところでひどいことを言う人がいるんですね。相談しに来た人に対して「親のすね」云々の発言があるのか。
不当な発言に対してどうふるまったら、どう抗議したらいいのだろう、と思いました。自分はまだ、こんなきついことを頼りになりそうな人から言われたことはありませんが、ひきこもり支援を受け始めたばかりでこれからどういう人びとと出会うことになるかわからないので、こんなことも覚悟しないといけないのか、と思いました。出会う人によって良い影響を受けたり悪い影響を受けたりするから、人は怖いなと思います。
人と話す経験が乏しいのでアサーションの本を何冊か読んだことがありますが、考えないといけないことがいろいろあるみたいで、アサーションはすぐに楽に身に付くものでもなさそうだし、実践するのは難しそうです。せめてやんわりと言い返せたらダメージも多少は弱まるかもしれないのですが。
同時に、逆に自分が無意識に人を傷付けることがないように気をつけようとも思いました。人と関わった経験が乏しいので、相手の反応を見落として一方的に話をしてしまうかもしれないので。家族から言葉に棘があると言われたこともありますし。
いろいろと参考になります。考えさせられました。
2016/07/16 8:37 PM posted by: ta
こんばんは、ヒカリ様。
私が学校を卒業して初めて働いたのはこの地方の大規模精神病院へPSWとして入職しました。その病院の医者のできの悪いこと。アルコール臭い息で患者を診察する医者、なんとかの一つ覚えのように同じ病名しか書かない医者。PSWに障害者手帳の下書きを書かせ、それをそのままボールペンで書く医者など酷いモノでした。20年ほど前の事です。
ヒカリさんの精神科で受けた痛みはトラウマの様な痛みでは無くスピリチュアルペインの様に感じます。
ヒカリさんの今の状況から感じるのですが、緩和ケア外来へ受診されてはどうでしょう。
2016/07/16 10:15 PM posted by: 月ノヒカリ
はなむらさん、はじめまして、でしょうか。
読んでくださってありがとうございます。

>相談しに来た人に対して「親のすね」云々の発言があるのか。

本当にこの言葉は、対人支援職であるはずの「精神科医」の口から発せられたからこそ、ショックが大きかったです。しかし、ここまで酷い精神科医は、そんなに多くはないはず、と思いたいですが。

>不当な発言に対してどうふるまったら、どう抗議したらいいのだろう

この精神科医は、どんなに私が「体調が悪い」と訴えても、否定を繰り返すだけでした。なぜ他人が「体調が悪い」というのを否定できるのか、今考えても不思議でしょうがないのですが……。
なので、何を言っても否定することしかできない人には、どう抗議しても無駄なんだと思うようになりました。そういう人からは、さっさと離れる方がいいかな、と。

このエントリに書いたことで、ひきこもり支援を受け始めたはなむらさんに、支援に対して身構えさせてしまったのなら、申し訳ないと思ってます。
はなむらさんは、できるだけいい支援者や仲間と出会えるよう、願ってます。

対人コミュニケーションにおいて、人の言葉に傷ついたり、あるいは自分が傷つけてしまったりすることは、ある程度は避けられないことなんだと思います。
もちろん本から学ぶのも有効でしょうが、やはり実地で人と話してみて、初めて理解できることも多いんじゃないかと。私もまだまだ未熟者ですが……。

これからのはなむらさんに、いい出会いがたくさんありますように。
コメントありがとうございました。
2016/07/16 10:21 PM posted by: 月ノヒカリ
たさん、こんばんは。
そうですか、やっぱり精神科医といっても、必ずしも信頼できる医師とは限らないんですね……。

緩和ケア外来ですか。アドバイスありがとうございます。
今行ってる病院にもあるみたいですが、受診を希望するなら、外科の主治医に申し出なきゃいけないみたいです。
ただ、身体的な緩和ケアにはまだ早いですし、心の問題としても、通常の精神科以上の対応を期待できるのか、疑問ではありますが……過去に、サイコオンコロジーが専門の精神科医の講演を聴いたことがありますが、あまりピンとこなかったので。
ともあれ、まずは主治医に聞いてみることにします。

コメントありがとうございました。
2016/07/23 7:06 AM posted by: はなむら
私のコメントのせいで嫌なことを再び思い出されて負担になったとしたら申し訳なく思います。
コメントの直後にブログを休まれたので、もしかしたら、余計なことをしたのかも、と思いました。
どうか、闘病生活の中にあっても少しでも心穏やかに過ごされますように祈っております。
2016/07/23 2:36 PM posted by: 月ノヒカリ
はなむらさん、余計なご心配をおかけしてしまったようで、申し訳ありません。
ブログを休むことにしたのは、自分の体調上の問題であって、はなむらさんのコメントは、嬉しかったですよ。
このブログにコメントを寄せてくださった方々には、心から感謝しています。
励ましの言葉、ありがとうございました。
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