2016.09.19 Monday 18:10
最近はブログに書くことも思いつかなくて、久しぶりの更新になってしまいました。

前々回予告した、癌の再発・転移にまつわる短歌を、ここにまとめておこうと思います。
そこそこ元気に毎日を過ごしている今となっては、悲壮感あふれる闘病短歌をつくってしまったのは、もはや黒歴史な気もしますが……自分としては気に入ってる歌も幾つかあるので、ブログに残しておきます。
Twitter投稿時とは、一部表現を変えた作品もあります。

最初の短歌は、今年の5月末、整形外科で骨のMRI検査をして、「癌の転移の可能性もあるから、精密検査をするように」と言われたときに書いた歌。
死神の消息を聞くたびにこの世界は色を鮮やかにする
まだ癌の転移かどうかはっきりしないけど、「もしかして私、死ぬのかな」って思ったとき、もちろん不安もあったんですが、それ以上に「世界が鮮やかになる」感覚があったんですよね。
「死」と向き合ったとき、自分が本当にやりたいこと・なすべきことの優先順位がはっきりする、みたいな。


次の一連の短歌は、6月初旬、実際に転移を告知された頃につくったものです。
死神がご機嫌いかがと軽やかに尋ねてわらう初夏真昼(はつなつまひる)

他界からの風の便りになつかしい空のにおいがよみがえる午後

生まれくる前の場所へと還る旅 ひと息ごとに花が零れる

去り逝くと知ればすべてがいとおしい 傷痕さえも煌き果てる

重すぎる荷物をひとつ捨てたあとの空漠をただ抱きしめている
いやー、この頃はもう、死ぬ気満々って感じでしたねー。
でもって、不思議なことに、再発を告知された当初は、さほど悲壮感はなかったんですよね。私の場合。
「そっか、死ぬんだ。仕方ないねー」みたいな。この感覚、根深い自殺願望をお持ちの方には、ある程度ご理解いただけるのではないかと。
実際のところ、当時のブログ記事に書いた通り、まだ数年は大丈夫だろうと言われたので、そんなに差し迫った恐怖はなかったのです。このときは。


次は6月中旬、骨転移の治療が始まった時期。
薬の副作用で、背骨が痛くて、ずっとベッドに横になってたときにつくった歌です。
脊椎がここにいるよと自己主張するように痛む長い長い夜

体芯を貫く光の道をもつ脊椎動物なんだ私は
その当時のブログ記事はこちらです。前回のエントリでも書きましたが、背骨が痛くなったのは、初回治療のときだけでした。 今は、注射をしても、目立った副作用もなく、まあまあ元気に過ごしています。


以下の連作は、7月、癌の転移した腸骨が痛くて、寝ていたときにつくった歌。
私から光も風も過ぎ去ってdepressionが支配する夏

致死量の悪意を解毒しきれずに悲鳴をあげた肝臓異変

ひんやりと白い機械のトンネルを出るたびに流れる時の砂

亡骸となりゆく日々を直射する生の証としての痛みは

ロキソニンだけでは消えない痛みのみ生の証として認めます

長生きも早死にするも親不孝だから間をとって早生き

通行人Aを襲った悲劇より静穏な死を迎える準備

一歩ごと見えないドアに開かれる終りへの道果てしなくひとり

いつか君も齢(とし)を重ねてたどり着く道にしおりを残していくね。
一部改作しました。
この頃が、いちばん精神的にキツかったですね。頭痛もあって、「もしかして、癌が脳に転移してるんじゃないか?」と不安になったりもして。
短歌は、雑誌などではよく「連作」という形で発表されることが多いのですが……私は「連作」ってどうやってつくるものなのか、まだよくわかってないんです。なので、これは習作ですね。


もう少し明るい気分のときに書いた短歌はこちら。
走れないからだを生きて黄昏に追い越されたら火星になろう
当時は、癌が転移した腸骨が痛くて、ゆっくりとしか歩けなくて。もう二度と走ることはできないのかな、と思うと、ちょっとせつなかったですね……。
でも今は、治療のおかげで、さほど痛みは感じないです。走ったり、激しい運動をするのは、今も避けてはいますが。


ありふれた病でたぶん逝くからだにはありふれた午後の紅茶を

幾千の叶わなかった夢の実がさざめきながら僕に降る夜

安らかに眠れ私が呼吸する機能を終えた後の世界よ
この三首は、「死」を強く意識していたときに、生まれた短歌です。
三首とも思い入れのある歌ですが、今はさほど死が間近に迫っているわけでもないとわかったので、こういう短歌は、当分つくるのはやめておこうと思いました。


というわけで、最近できたのがこちら。
ほら、悪性新生物と呼べば癌もやんちゃな未知の小動物だ

転移した癌をチャルルと名付けたら一緒に生きていける気がした
「癌とともに生きてゆく」短歌です。
保険の契約文書なんかには、癌のような悪性腫瘍を「悪性新生物」と書いてあったりしますよね。
「悪性新生物」って文字面だけ見ると、悪戯好きの新種のネズミみたいな生き物を連想しませんか?

そんなわけで、肝臓と骨に転移した癌のこと、私はこれから「チャルル」と呼ぶことにしました。
私、チャルルと一緒に幸せになります! 皆さんありがとう!!

いやー、やっと明るく前向きな闘病ブログっぽくなってきましたね。
ええと、いろいろツッコミどころはあろうかと思いますが、どうかこれからも生温かい目で見守ってください。






| ●月ノヒカリ● | 短歌 | comments(0) | trackbacks(0) |
2017.12.12 Tuesday 18:10
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