2009.10.13 Tuesday 23:04
(一応前回の続きです。)

今年2月に、村上春樹がイスラエルの文学賞「エルサレム賞」を受賞し、授賞式で「卵と壁」のスピーチをしたことは、記憶に新しい。
当時はイスラエルによるガザ侵攻の直後で、「授賞式に行くべきではない」とか、いろいろ言われていたらしいですね。(こちらのブログに詳しい。)

あのスピーチ、わりと絶賛モードだったように思うけど、私は例によって、村上春樹には特に感心はないのであった。
「卵と壁」のスピーチも、「やっぱりここは感動すべきとこなんだろうか」と思いつつ、いまいち感動ポイントがわからなかった。

だから、「田中康夫と浅田彰の憂国放談」の記事を見つけたときは、ちょっと笑ってしまった。以下引用。

田中: エルサレム賞を受賞した村上春樹の「壁と卵」のスピーチについて、斎藤美奈子が朝日の文芸時評で書いていたのはなかなかよくてね、「このスピーチを聞いてふと思ったのは、こういう場合に『自分は壁の側に立つ』と表明する人がいるだろうかということだった。作家はもちろん、政治家だって、『卵の側に立つ』というのではないか。卵の比喩はかっこいい。総論というのはなべてかっこいいのである」って揶揄していたよ。
浅田: ガザ攻撃の直後に行くべきじゃないっていう反対論を承知の上で、彼があえてエルサレムに行き、滝田洋二郎よりヘタじゃないかと思える英語でカッコ悪くスピーチしたこと自体は、ぼくはいいと思うんで、イヤミな批判はしたくない。ただ、過去に同じ賞をスーザン・ソンタグが受賞したときは、文学については総論を語りつつ、政治についてはイスラエルのパレスチナ政策を各論において具体的に批判してた。当然それが正しいんで、作家だから政治についてもメタファーで語るってのは、逃げだよ。だいたいあのメタファーは曖昧すぎる。「じゃあ9・11でビルに突っ込んだ連中は卵なの?」ってことにもなるわけだしね。結局、かつて政治に傷ついたと称する団塊の世代の喜びそうなチープな救いのメタファーにしかなってない。現に同世代の批評家たちがやたらに褒め称えてるじゃない? まあ、あのままめでたくノーベル賞をもらえばいいんじゃないかな。
田中: もっと言えば、「私は自分に言われることとまったく反対のことをする傾向があります」と自己規定するのなら、今こそイスラエルを礼讃したら、と言いたくもなるよね。誰もが「卵が尊い」と唱和する局面であえて、壁の側にだって一分の理はあるのではと木鐸を鳴らしてこそ、小説家としての証しだとするなら、彼の思考と発言は二重の意味で矛盾しているよ。だったら、「私はノーベル賞が欲しいです。強い影響力をお持ちのユダヤ系の皆さん、どうぞヨロピク」って正直に吐露したほうが、商売人としてはよりマチュアな大人だったって話だよ。

うわー、田中康夫も浅田彰も、口も悪いし底意地悪いね(笑)
私はこういう人たち、好きです。惚れ惚れしますね。

田中の「壁の側にだって一分の理はあるのではと木鐸を鳴らしてこそ、小説家としての証し」という発言には、思わず拍手してしまった。
いや、私だってイスラエルのガザ侵攻が良いとは思いませんが、小説家にはそうあってほしいものです。

ちなみに浅田の発言に出てくるスーザン・ソンタグのエルサレム賞受賞スピーチは、こちら↓で読めます。
 ソンタグ講演、その一  その二 (哲学クロニクル)

過去には、アーサー・ミラーもエルサレム賞を受賞した際、イスラエル批判を行なったそうです。

でも私は別に、ここでイスラエル批判をしたいわけではない。
このブログのタイトルを「身近な一歩が〜」としたのも、私自身が、社会問題について発言するときに、「等身大の自分にとってリアルな手応えのあること」のみ語りたいと思っているからだ。
この日本で年間3万人以上が自殺している今このときに、遠い外国の戦争を取り上げなきゃいけない切迫した理由は、私にはない。

ただ、以下のようなサイトに出会ってしまったら、パレスチナ問題も「遠い世界の出来事」とは思えなくなるのですよ。
  注意深くお金を使うために(イスラエル支援企業リスト)

げええ〜〜〜。スターバックスの会長って、そんな発言してたんですか!? 知らなかったよ。つい最近、スタバでコーヒー飲んだばかりなんですが。
このリストにある企業、スタバを始め、マクドナルド、コカコーラ、ネスレ、インテル、マイクロソフトetc.の商品をまったく消費せずに、この日本で生活できるものだろうか?
つまり、私たちが飲んだコーヒーとか、今使ってるパソコンを買ったお金が、イスラエルに流れて、パレスチナ人虐殺に使われたかもしれないんですよ。
そう考えると、見慣れた街の風景や、今使っている商品が、血の色に染まって見えてしまう―――というのはナイーブすぎるでしょうか?

村上春樹の「卵と壁」スピーチの最後の方、「私たちがシステムをつくった」という発言は、そういう意味ではないかと思うのですが。そこまで実感してはじめて、このスピーチは「感動的」なものになるのではないかと思うんですが。

まあでも私はここで、イスラエル批判をしようとか、不買運動を呼びかけよういうわけではないんです。
だって『ダニエル・バレンボイム自伝』を読んだ今の私は、イスラエル人の中にも、アラブとの平和共存を望んでいる人が大勢いるって、知っているのだから。それにイスラエル人にだって、迫害されたり、ずっと祖国を持たなかった苦難の歴史があるのだから。

私が「憂国放談」を取り上げたのは、この続きで浅田彰がバレンボイムについて語っているからだ。長くなるので引用はしないけど、浅田はバレンボイムを「村上春樹なんかとは格が違うよ」とまで評価している。

私が本当に書きたかったのは、ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団―――バレンボイムとサイードが始めた、アラブとイスラエルの若い音楽家たちのためのワークショップについてだったんです。
この活動は、「平和」の意味を考える上で、とても興味深いものだと思う。

というわけで次回やっと本題

| ●月ノヒカリ● | 社会 | comments(0) | trackbacks(0) |
2017.12.12 Tuesday 23:04
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