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2010.02.26 Friday 22:44
評価:
宮台 真司
メディアファクトリー
¥ 1,890
(2008-11)
コメント:<社会>をうまく生きられないものこそ、幸いなり

やっと読み終わった感想。
前々回前回に、読んでいる途中思ったことなどを書いたのですが。

この本は、「ダ・ヴィンチ」誌に連載されていた映画評(2003〜2008年)をまとめたものだ。
ただ、この本の趣旨は「映画批評」にはない。「私たちが世界をどう体験しているか」を、映画作品を批評することによって、浮き彫りにしようとする<世界体験>の方に主眼が置かれている。

まずタイトルが面白い。
<世界>とは―――宮台の定義によれば―――「この社会」をも含んだ「ありとあらゆる全体」のことである。
さて、あなたは<世界>を「コスモス(=秩序あるもの)」と定義するだろうか。それとも「カオス(=デタラメなもの)」と定義するだろうか。
どちらもアリだと思うけど、前者と後者では、この世界がまるで異なって見えるはずだ。
前者は、因果応報的な秩序を前提にしており、「超越的な神様がこの世界をつくったのに、なぜ理不尽があるのか」と考える。
一方後者は、「世の中はそもそもデタラメなのに、なぜ(ありそうもない)善などがあり得るのか」と考える。

宮台は徹底して後者の立場を取る。
<世界>はそもそも、ギリシア神話のようにデタラメなものだ。本書を通じて、「理屈」よりも「なんでもありのノリのよさ」、「理解(分かり合うこと)」よりも「ミメーシス(感染的模倣)」が力強く推奨されている。
人は理解しあうことはできない。しかし感染することによって繋がれる―――。

私も宮台に感染したのかもしれない。
宮台は、私から見たら、能力、社会的地位等あらゆる面で恵まれたエリートだ。
私が生きづらいのは、自分の能力とか病気とかに起因すると思っていたけど、宮台のように恵まれた人が「この社会は、貧乏や病気がなくても、期待はずれに満ちている」と語るとき、「そうなのか」と驚き、妙に納得した。
つまり、自分がたとえ病気でなくても、やっぱりこの世は生きづらいんだろうな、という根源的な困難とか空虚さに目を開かされる。それは私にとって救いでもあり、絶望でもある。

宮台は、今日的な鬱や解離に対する処方箋として、「世の中に真面目に向き合わない方が、自分も周囲も幸せになれるのだ」と説く。その上で「敢えて鈍くなること」を勧める。間違っていないと思う。けど、私はそんなに器用には「鈍く」なれない……と思いつつ、宮台の言葉には、デタラメで不条理な世界を受容し、肯定する力を感じる。
「それでも日は昇る」「それでも人は生きている」的な開き直りと笑い飛ばし。そう。確かに人生は思い通り行かない。だから時には苦界や任侠に「身を落とす」。だが「身を落とす」ことそのものに「もののあわれ」がある。だから「浮かぶ瀬」などなくてもまったく構わない。
    宮台真司『<世界>はそもそもデタラメである』P.360

「尊厳死」についての問題提起を映画『海を飛ぶ夢』に見出した回が、印象的だった。事故で寝たきりになった主人公が、周囲に愛されていながら、「そんな人生は尊厳を欠く」として死を望む。宮台は「死の自己決定権」の観点から、消極的安楽死にも積極的安楽死にも賛成する立場だが、この立場を取ることにシコリがある、と告白する。シコリを持ちつつも、宮台は「他者の主観性を尊重し、自死を許容するべきだ」との公式見解をとり、しかもそれを自明視しない。

また1960年代の躍動について書いた回の後半で、豊かな社会を望むゆえに私たちは<システム>を拡大させてきたが、今は逆に、人が<システム>にとって都合のいい存在になってしまった。そんな社会を生きなければならない理由はあるのか、と問いかける。(システムという言葉で私は、村上春樹の「卵と壁」のスピーチを思い出した。)

宮台の語りは、二律背反に満ちている。
不透明で、何が善きことなのか自明ではなくて、それでもこの社会を選択的に生きなければならない私たちの困難。だからこそ、単純なプロパガンダを声高に叫ぶことを嫌悪しつつ、それでも主張することを止めない宮台の姿勢には「清濁あわせ呑む前向きさ」が感じられる。絶望した後に、かすかな希望の光明が差し込む。

日本の難点』などで語られる宮台の政治的な主張には、私は必ずしも賛同できないのだけど、それでも「前提」の部分は共有できる。

この本のまえがきで宮台は、子ども時代から一貫して、<世界>に開かれるために必死で映画にしがみついてきた、と語っている。
早い話が映画オタクなのだ。
前回も書いたように、私はこの本をある種の「文学」として享受し、宮台に感染した。宮台が映画を素材にして語る<世界>のイメージに翻弄され、そのイメージの海で泳いだり、潜ったりして遊んだだけで、決してこの本を読んで賢くなった、ということはないのが残念ですが。
とにかく宮台のクールな頭脳と熱いオタク魂に心震えた一冊でした。

 やっと図書館に返しに行けるわ〜。
| ●月ノヒカリ● | 読書感想 | comments(0) | trackbacks(1) |
2010.02.23 Tuesday 23:05
前回の続きで、宮台真司『<世界>はそもそもデタラメである』を読んでいる途中で思ったことなど。
なんで私が、たいして映画好きでもないのに、映画批評本(『<世界>は〜』)を読んでいるのか?という問題について。
宮台真司という人が、面白い人だからだという他はない。

私は90年代後半に、宮台の著作を何冊か読んできたけど、ここ十年くらいは遠ざかっていた。雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されていた「世紀末相談」とか大好きだったんだけどね。
こちらのブログ記事によると、今や宮台読者は人文系ヲタ男子ばっかりらしい。かつては女性読者も多かったように思うんだけど。宮台本に共鳴するブログ主のようなオタク女は、相当アイタタタな存在だな、と思っておいてください。

宮台は社会学者ということになっているけど、著書を読んでもあまり「学者」って感じがしない。
社会学者って、データだけ見て勝手な説を展開する人が、結構いると思うのよ。でも宮台は、データではなくて人間を見ている。つまり、「自分」を見ている。だから宮台の著書は、すごく「文学的」で「詩的」だ。あるいは「宗教的」(福音書のような)なのかもしれない。
思えば私は昔から、宮台の著書を、学術書とか評論としてではなく、ある種の「文学」として享受してきたように思う。こういう読み方って邪道かもしれないけど、そんなのどうでもいい。教科書的な「正しい読み方」なんて学校卒業と同時に捨ててきました。

『<世界>はそもそもデタラメである』でも、時折表れる詩的な表現にシビレた。
例えば以下の文章。
 因みにモダニズムとは何か。「近代主義」と訳すと間違う。一口で言えば、近代化の眩しき「光」を希求しつつ、急速に失われゆく共同体の「闇」への執着との間で引き裂かれる心性である。(中略)
 そこでは新旧の世界観がせめぎ合う。都市建設の陰に妖怪が蠢く。国家建設に思いを馳せる帝大生の故郷には因習的な家族が暮らす。光と闇の対象が織りなす絵模様を前に引き裂かれた心性がある。共同体の子宮から引き剥がされた嬰児が新たな代替的全体性を希求する……。
 だからモダニズムの時代は長続きしない。近代化が進めば、闇が消え、闇が消えれば、光と闇に引き裂かれるモダニズムの心性も消える道理だからだ。
   (宮台真司『<世界>はそもそもデタラメである』P.134)
ああ、乱歩の世界ですね。
この文章を引用したのは、単に表現が美しかったからだけど。
ここだけに限らず、『<世界>はそもそもデタラメである』は、二律背反の表現に満ちている。
光と闇の間で引き裂かれるもの。
現在は闇は消え去り、すべては<システム>の中に統合されてしまった。光も闇もない、フラットな<システム>の中の息苦しさ。
前回書いたような、「素朴に家族を生きられない」からこそ、「家族を演じるしかない」という痛切な断念。
宮台はこの本を通じて、一つの世界観を提示しているんだけど、それはまた別の機会に。

これは毒性の強い本だ。悪酔いしたのかもしれない。
ここんとこ不調が続いているのは、この本を読んでいるせいかもしれない(逆に不調だからこそ、こういう本に共鳴してしまうのかもしれないが)。
入り組んだ迷宮で、出口も見えず、過去の傷痕と向き合わされるような感覚に苛まれている。
いやこの本はそんな暗い本ではなくて、むしろ「希望」が語られているんだけど、その「希望」というのが、相当深く絶望したあとにしか現れないものなので、水深1万メートルの暗闇まで潜ってしまって、まだ浮き上がれないような感覚でいるのです。

この評論、宮台のブログでも読めるみたいです。
個人的には、ここに書かれていた「オペラ劇場の作り」の話は、初耳でちょっと驚いた。しかし言われてみれば確かに、貴族にとっては、オペラ劇場はベタに舞台を楽しむものではなく、ボックス席で互いを観察しあう社交とスキャンダリズムの場だったのだろうな、と納得。
次は本を読んだ感想をちゃんと書くつもり。

| ●月ノヒカリ● | 日記・雑感 | comments(0) | trackbacks(0) |
2010.02.21 Sunday 23:33
今読んでいる本↓
宮台真司『<世界>はそもそもデタラメである

映画批評の本なんだけど、私はほとんど映画は見ない。なのに読み始めたら面白くって、でも読みやすい本ではないから時間がかかってしょうがない。
というわけで中間報告。あとで別にちゃんと感想書くつもりだけど。

宮台真司という人は、一般的にはどの程度知られているのかわからないけど、90年代に、メディアで女子高生の援交を擁護する発言を繰り広げて有名になった社会学者だ。で、私は援交とかにはまったく関わりなかったけど、宮台の著書には共感できる部分が多くて、何冊か読んでいた。
以前書いたけど、自分の育った家庭は、きっと外から見たら「幸せな家庭」に見えるんだと思う。でも内実は、そこは地獄だと私は感じていたわけで。その理由を、宮台が示してくれたように思えた。
私にとっての宮台は、「家族」を解体した人だ。というのはちょっと言い過ぎで、もっとずっと前から、とっくに「家族」は壊れていて、宮台は「家族は幻想になってしまった」ということを「郊外化」というキーワードを通じて、教示してくれた人だった。(『岸辺のアルバム』という平凡な家庭の崩壊を描いたTVドラマが放送されたのが1977年。)
私は、自分の育った「幸せな家庭」がうそ寒いと感じていて、そのことに苦しんできたので、宮台の著書には共感できる部分が多かった。

『<世界>はそもそもデタラメである』でも、今日「素朴に家族を生きる」のは不可能だから、「家族を演じよ」と推奨する(P.333〜)。これ、私にはすごくよくわかる。

いまどき、日曜夜のサザエさん一家は、あり得ないメルヘンの世界だ。少なくとも私にとっては。
あんなふうにベタに「家族」を生きられない。「サザエさん一家」のような幸せ家族は、「現実には成就し得ない夢物語」で、でもかつては「サザエさん一家」は「平凡な家庭の代表」だったはずで、そのギャップに私は苦しんできたんだよね。

で、実際のところ、どうなんだろう?
私には、「素朴に家族を生きられる」と考えている人も、かなり多いように思えるんだけど。宮台の語るような「素朴に家族を生きられない」という苦しみは、どの程度共有されているのか?
「家族は演じるものだ」という感覚、どれほどの人が持っているのだろう?
そういう感覚を持っている人って、多数派なのだろうか? それとも少数派なのだろうか?
まずそこでつまずいちゃうというか、自分の周囲に宮台の読者だという人は一人もいなくて、リアルにこういうこと話した経験がないから、よくわからないんだよね。現実には、「ベタな家族礼賛」って根強く存在しているように思うんだけど。メディアでもよく見かけるし。

長くなったからいったんここで終わり。

| ●月ノヒカリ● | 日記・雑感 | comments(4) | trackbacks(0) |
2010.02.19 Friday 22:47
不調である。
なんだかわからないけど不調だ。もずくのたたりか?
先週から読んでる本は、まだ読み終わらないし。
そんなわけでブログを更新できないから、という不純な動機の拍手レス。
以下からどうぞ。
| ●月ノヒカリ● | web拍手レス | comments(0) | trackbacks(0) |
2010.02.14 Sunday 22:44
今日はもずくを食べる日です。

もずく
<参照URL>
Uncyclopedia:バレンタインデー撲滅/2010年バレンタインデー中止のお知らせ

ただいま面倒臭い本を読んでいるため、ブログ更新が滞っております。
拍手コメントくれた人、ありがとう♡
超マイペースなダメダメブログ主ですいません……。

オリンピックは、フィギュアスケートだけは見るつもりです。真央ちゃんLOVEです。

もずくを食べて皆ハッピーになろう! 聖★もずくデー
| ●月ノヒカリ● | 日記・雑感 | comments(0) | trackbacks(0) |
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